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夢現(ゆめうつつ)3 [小説・詩作]

   3 博子の夢

 博子は、ひまわり幼稚園、たんぽぽ組に通う、もうすぐ5歳になる神崎家の
一粒種である。
幼児に夢があるかって?幼児にだって夢は間違いなくある。
 博子は一人子のせいか、両親,祖父母から溺愛を受けて育った。決して甘や
かされたわけではないのだが、他の子に比べて多少,自己中心的である。他
の子から指図を受けることを極端に嫌う。逆に何事においても仕切りたがる。性
格だからと言えばそれまでだが、妹弟がいれば随分違っているはずである。
兄弟,姉妹が楽しそうに遊んでいる姿をみて、羨ましそうな表情をする。そして、
「ひろちゃんにも、妹が欲しい。」
と、時々両親におねだりをした。

 直人は、博子の願いを叶えることに今一つ消極的であった。もちろん肉体的
なことではない。四十とは言えまだまだそちらのほうには自信がある。ないのは
今後の生活設計である。先に触れた、本当にこのまま定年まで勤めることが出来
るのか、自分の進路を考えると,この年でもう一人という踏ん切りがなかなかつ
きにくい。確かに博子にとっては、姉妹があったほうが何かといいに違いない。
しかし、今できれば成人を向かえたときには、自分は60過ぎである。そのとき
の自分の姿などとても想像できない。考えてみれば非常に情けない。男の甲斐性
は一体どこへいってしまったのだ。しかしこれが現実なのである。後先考えずに
無責任な行為をする人間に比べれば,なんぼかりっぱじゃないかと勝手に正当化
してみたりもした。直人にはどうも自分勝手な解釈が多い。勝手ついでにこうも
考えた。
(もし、私塾を始めたら、博子と同じ年代の子もたくさんくるだろう。そうすれば、
気の合う友達もたくさんできるに違いない)

<続く>


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