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『金閣寺』 [本]

コロナウィルスの猛威で、行動自粛の必要性が日々叫ばれています。
自宅で過ごすことに耐えられないという方もいますが、こんな時、静かに読書をして
過ごすのもいいです。

三島由紀夫の『金閣寺』を読みました。
言わずと知れた三島由紀夫の代表作です。

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私はこれまで三島作品を読んできませんでした。正確には1冊しか読んだことがありません。
大学生の頃読んだ『命売ります』という小説でした。(今でも本棚に残しています)
ちょっとハードボイルド調の大衆小説で、サラッと読めましたが、それ程心に残るものでは
なく、これが三島の作風だと勝手に思い込んでしまったのです。時が過ぎ、今回『金閣寺』を
読んで、その思い込みは崩れ落ちていきました。三島文学の神髄を垣間見た思いです。

『金閣寺』は、昭和25年7月2日の未明、鹿苑寺で有名な金閣が、学僧で当時21歳の
林承賢の放火によって全焼した事件を素材にしています。

実際に起きた放火事件では、犯人は寺の裏山で自殺を図ったが一命を取り留めています。
犯人の母親は事情聴取のために京都に呼ばれ、その帰りに保津峡で投身自殺しており、
本当に悲惨なものでした。
小説では、主人公は自殺を図らず、小刀とカルモチン(睡眠薬)を谷底に投げ捨て、
 ”生きようと私は思った” で締めくくられています。
三島がなぜ史実に反してそういう結末にしたのか不思議です。

小説とは言え、この作品を、金閣寺再建後、僅か1年余りで発表したことが驚きです。
この作品では、金閣寺の住職が、女や酒好きであることを公に書いています。
主人公が老師のそういった姿に、尊敬の念を失い、誤解を受けるまでに至ったことを
綴っています。実際の金閣寺の住職は、この小説が世に出た時、どんな思いだったので
しょうか。現代なら三島は寺側に訴えられているかもしれません。

3年前に、実際に再建された金閣寺を訪れています。
絢爛豪華であることに間違いありませんが、焼失前の姿を見たかったです。

https://tomo35.blog.ss-blog.jp/2017-04-28

法隆寺などもそうですが、その時代に建立されたものがだけが、真に歴史的な価値を
見出せます。

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東大法学部を卒業して、大蔵省に勤務するも9ケ月で退職したり、最期に自衛隊市ヶ谷駐屯地
で自決したりと、波乱万丈の人生を送った三島由紀夫をもっと知りたいという思いが強くなり
ました。合わせて購入した『仮面の告白』を続けて読もうと思います。
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十円木馬

皆さん、nice!ありがとうございます。
by 十円木馬 (2020-04-12 15:33) 

いっぷく

美に対する嫉妬でしたね。闇は深いと思いますが、作者にそれを肯定する気持ちがあったのでしょうか。
三島といえば、確信犯的に文学座を割る台本を書いた人ですから、既存の概念や観念に対してアンチテーゼで挑む気持ちが強かったのかもしれません。


by いっぷく (2020-04-12 19:13) 

十円木馬

いっぷくさん、コメントありがとうございます。
確かに放火の動機は、「美に対する嫉妬」だと犯人は証言して
いますが、数年後に病死してしまった以上、真実は闇の中の
ような気がします。三島自身、犯人の学僧と会って取材などは
していないので、三島なりの思想で書いたのでしょう。そういう
意味ではいっぷくさんの意見に同感です。
by 十円木馬 (2020-04-13 09:13) 

U3

十円木馬さん、こんにちは。
これ中学生の時に読みました。
by U3 (2020-04-16 16:48) 

十円木馬

U3さん、コメントありがとうございます。
U3さんの高い執筆力は、若い頃から小説をたくさん読まれて
いることが滋養となっているのですね。
by 十円木馬 (2020-04-17 14:34) 

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