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太く短い人生 [人生観]

知人が亡くなりました。
特別深い付き合いだったわけではありません。

私は大学を卒業して最初に就職した会社は、在籍期間が3年間でした。
商社でしたが、2年目に企画室に配属され、そこで初めてコンピュータに携わりました。
文型であった私には、プログラミングは難しかったですが、これから必ず伸びていく分野と確信し、
専門会社でやろうと、1年間悩んだ末に退職を決意しました。

直上司に退職願いを出すと、後日社長から呼ばれ慰留されました。
しかし私の決意は変わりませんでした。社長のご子息も同じ会社に在籍しており、私と同い年
でした。大手商社に勤めていた彼ですが、将来会社を継ぐため入ってきたのが、私が辞める
1年前のことでした。ですから一緒にいた期間は僅か1年あまりです。
その間、彼は得意先や商品の視察などに行く際、なぜか私に一緒に同行するように指名して
きました。

社長からの慰留を断った数日後、その彼から飲みに誘われました。部署も違い、ほとんど接点
がないのに不思議に思いましたが、私に対して退職を撤回するための説得でした。
その時に言われたことが今でも忘れられません。

「将来社長を継いだとき、自分の右腕になって欲しいと考えていた」という言葉。
話の最後に、彼の頬に涙が伝わる姿をみて、正直何とも言えない気持ちになりました。

「ありがたいですが、決意は変わりません。でももし、何十年か経って、お会いする機会があって、
そのとき私を必要とされたなら、是非協力させてもらいます。」
と返答しました。
当時お互い20代半ばで、こんな若造に、そんな言葉をもらえたことに正直感動しました。
退職後は、数年間年賀状のやり取りをするくらいでしたが、やがてそれもなくなりいつしか記憶
から消えました。

それが2年前、偶然のきっかけから再び会う機会ができたのです。
今年の初旬に彼から飲みに誘われ、4軒程梯子しました。
趣味のゴルフの話や、お互い子供が大学受験中だったため、話はつきませんでした。
同年齢でもあり、今はお互い経営者として、これからいい付き合いができると思いました。

その矢先、3月下旬に彼の体に癌がみつかりました。体に痛みを覚え診てもらったところ、
進行が進んで手術は不可能、余命半年と宣告を受けたのです。
7月下旬に会ったときは、かなり辛そうでした。入退院を繰り返していましたが、それでも気丈に
振舞っていました。好きなゴルフも気分が紛れるので無理して出かけていると話していました。
しかし医者の宣告どおり、先日、天国に召されました。
友人も多かったのでしょう、通夜にはたくさんの人が弔問に訪れていました。
接した期間は短くとも、記憶に残る男であったことに間違いありません。

今はただ静かに冥福を祈りたいと思います。

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