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『仮面の告白』 [本]

『金閣寺』に続いて、『仮面の告白』を読み終えました。

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三島が24歳の時に書かれた『仮面の告白』は、三島由紀夫の自叙伝です。
初めて読んだ『命売ります』は、軽く読めるちょっとハードボイルド的な大衆小説。
次に読んだ『金閣寺』は、史実に近い本格的な文学小説でした。そして今回の
『仮面の告白』は、いわば私小説です。作家には、作風があって、文体などは似た傾向
になります。しかし三島の作品は本当に同じ作家が書いたのかと思ってしまう程、作風
が違っています。
それにしても、これ程赤裸々に自分の事をかけるものなのでしょうか・・。

三島が女性に対し不能であることは、何かの雑誌で読んで漠然と知っていました。
今でこそ同性愛をカミングアウトする有名人も多く見受けられるようになりましたが、
小説が発表された昭和24年は戦後間もない時代であり、世間の目はもっと冷ややか
だったと思っていました。しかし実際は、川端康成を始めとして、この作品の評価は
非常に高いものでした。

物語にも出てくるグイド・レーニの『聖セバスチャンの殉教』。この男の裸の絵を見て
トキメキを感じるといった内容から考察すると、三島が男性を好きだったことは事実
なのでしょう。しかし腑に落ちないこともたくさんあります。

私は小説を読み終えた後、三島由紀夫について調べていると、33歳の時に結婚し、
子供も二人いることを知りました。それまで三島は生涯独身であったと思い込んで
いたので、この事実に対しては正直驚きでした。

学生時代、女性に対する唯一の恋心についても描かれています。
彼の学習院における親友であった三谷信の妹、邦子(小説内では園子)の存在です。
これが事実だとすると、本当に三島が女性を愛せなかったのかは疑問です。少なくとも
愛そうと努力したことは確かです。
ちなみに邦子は、三島の死後に『仮面の告白』のモデルになっていることを訊かれ、
「三島さんはとっても素直なまじめな方で、性的倒錯を装ってみただけじゃないの
かしら」と語っています。

『金閣寺』では、住職が酒と女好きと暴き、この作品では、モデルとされた女性が
淡い恋について描かれ、当事者にとってはいい迷惑です。
虚弱体質だった彼が、ボディビルでマッチョマンになったことも解せません。

三島由紀夫という人間像を知れば知る程、ミステリアスな一面と、人間臭い一面が伺え、
何とも言えない不思議な魅力に取りつかれている自分がいます。
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mwainfo

遠い日、自由が丘のガード下マーケットの2階にボディービルジムがありました。そこに三島由紀夫氏が通っていました。わたくしも参加し、一緒にトレーニング後、シャワーをたまたま二人で浴びたことがありました。気さくなとても鋭い人柄と見受けました。風呂上がりに、魔法瓶に入れてきた紅茶をごちそうになったことがありました。香りのいい飛び切りの紅茶でした。その後ジムは閉鎖になり、彼は田園調布のボクシングジムに通いだしました。お前も来るか、と言われましたが、さすがボクシングは参加できませんでした。
by mwainfo (2020-04-21 20:41) 

十円木馬

mwainfoさん、コメントありがとうございます。
三島氏と実際接点があったとのこと。すごい経験をされたのですね。
時代の運不運があるかと思いますが、小説家としては、芥川賞が受賞できなかったことは、不思議でなりません。数冊読んだだけでも、その文才力がいかに卓越しているかが分かります。
by 十円木馬 (2020-04-22 15:27) 

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