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人生の価値について [本]

読み始めるとジャンルを問わず乱読してしまう習慣があります。

この本は読み終えて、正直難しかったというのが実感です。
人生を歩む上で、何かの指針を示してくれる内容ではありません。
ただ、舌癌によって死の恐怖を経験した著者の、人生観に対する素直な
思いが伝わってきます。
この本には、人生に関する著者の様々な問いかけがあり、しかも明と暗に
大別すると、暗をテーマにしています。
悲劇、破滅、絶望、懺悔、後悔等、人間としてどちらかと言えば味わいたく
ない項目に鋭くメスを入れて論評しているのです。

しかし、この暗(失敗)を否定するのではなく、むしろ人間にとっては必然的
なものであり、受容することは宿命なのだと感じさせます。
そのなかで死に対する章は、特に興味をもって熟読しました。
私自身、若い頃「死」、特に病気ではなく、自殺について考えたものです。

それは死に対する憧れではなく、なぜ当事者がそうした思いになるのか
という漠然とした疑問でした。
作家の芥川龍之介や太宰治、川端康成や三島由紀夫、何れもどんな
思いで自殺をはかったのかを。
ただこうした人たちは、一般的でなく自分とだぶらせるには距離を感じてしまい
ます。
そうしたなかで、大学当時、強烈な衝撃を受けたのが、高野悦子の
「20歳の原点」でした。立命館大学の学生だった彼女は、ある夜、鉄道へ飛
び込み自殺します。
直前までの日記には日常の彼女の気持ちが綴られています。
ところが日記でありながらその中に「虚栄」、「虚飾」が入っているのです。
例えば付き合ってもいない男性とさも関係があるように書かれたりしている
のです。そこには人
には分からない寂しさや虚しさを持っている彼女がいます。
ここに人間らしさというか、自分と重ね合わせることができると感じたのだと
思います。自分が、彼女の近くにいれば、自殺は防げたはず、当時そんな
ことを考えていたような気がします。死を前にしても自分をよく見せたい、
ある一面で虚飾する。人間とはこんなものなのかと色々考えさせられました。

「成功と失敗はしょせん同じものの2面に過ぎない」という著者の思いは、
そうした意味でも心に残る一文です。


西尾幹二著
新潮選書
¥1200


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